(順序が逆になってしまいましたが)去年末、日本民藝館へ足を運ぶことができました。

見応えのある新作工藝公募展と合わせて、今回は西洋の道具や朝鮮の焼き物や漆器などの展示がありました。

去年の公募展最終日に訪れた工藝公募展は少々の混雑。いつからなのかわかりませんが、入館が予約制になっており、今回は訪れる人の数も落ち着いていてゆっくり観覧できました(写真撮影禁止なので、中の画像はありません)。インスタでおみかけする作家さん方の作品を探してじっくり拝見・・みなさん素晴らしい技術をお持ちです!!いいものを拝見しすぎて、もうこの時点で頭がパンク寸前・・・。

この後にゆっくり見た企画展。

グリム童話などにでてきそうな西洋の生活道具は(展示物はもっと後の時代のものですが)、農夫が自分でつくったのではと思わせるような素朴なものたち。人の手で作られた安心感とあたたかみが溢れていました。

木製や錫などで作られているチーズ道具やビールのマグなどのテーブルまわりの道具などは、いまではプラスチックやステンレスなどの工業製品になり代わってしまっているでしょう。こんな道具に囲まれて生活できたらさぞ幸せでしょう。妄想がひろがります・・。

鉄製の鍵や看板など、鍛冶屋の仕事にはささやかなデザインも施されています。ブレーメンの音楽隊を思い出しました!

イギリスやフランス(だったかな?)のおおらかな家具やスリップウェアは、繊細なつくりの朝鮮の器や箪笥と対照的。西洋の道具も、ミュージーアムピースレベルのものはきっと本国の博物館に展示されているのでしょう。でも民藝館には、人の手の跡がみえるこの民藝が合っています。

柚木さんの本と、1970年代韓国の写真集と迷って(去年も迷った)、軽い方のこちらの本を持ち帰りました。

その次は、小金井公園にある江戸東京たてもの園へ。

東京へ行く機会は度々あっても、この辺りまでなかなか足を伸ばすことができずにいました。ようやくのたてもの園デビュー。目当ては、前川國男の自邸と、江戸の街並み(実際は江戸ではなく、江戸〜昭和のものでした)。

前川國男の自邸(上と下)。

モダニズム建築ながら、木材の使い方が和の家のようで落ち着きます。吹き抜けと日の取り入れ方も大胆でなんと明るいことか。


もののない戦時体制の中で建てられたそうですが、上写真の中央にある丸い柱は、なんと電信柱だそう。工夫ですね。

前川邸のあとは、たてもの園内をざっとみて、目当ての江戸〜昭和の街並み(勝手に命名)へ。

看板建築やら、商店やらが同じ通りに並んでいるけれど、それぞれの建物の時代はバラバラだったりします。

東京都内ではこうした建物を昔のまま使うことはできないのでしょう。松本や善光寺の門前通りの街並みとあまり変わらない気もしますが、こうして都内で保存されているというところに価値があるのだと思いました。

サザエさんにでてきそうな通り。50年ほど前までは、どこでも見られた町ではないでしょうか?

下は、庶民的な居酒屋(山本周五郎の話にでてきそう・笑)。江戸時代の終わりくらいに建てられたようです。

長野のアトリエに閉じこもって制作しているのも楽しいのですが、こうして外の世界の空気を吸うのも大変刺激になりました。

本物の素材が、長い時間を経て輝きを増している場面を、何度も目に焼き付けてきました。大事に使っていただけるものを作ろう、という思いを強化しながら長野へ帰ってきました。