天然発酵灰汁建て

自然のシンプルな材料を使って、天然灰汁発酵建てで染めています。

苛性ソーダ(ハイドロサルファイト)を助剤として使い、簡単にできる化学建てもあります。ですが、私は自然の材料で建てることにこだわり、りんごの木からつくった灰汁とすくもをつかって自然に発酵させる「天然発酵灰汁建て」の方法で染めています。

「天然発酵灰汁建て」の利点としては、役割を終えた藍甕の中身を堆肥にできること、排水が汚れないため環境に優しいこと、また、発酵による染めのため色持ちが大変よいことです。

藍建ての準備

当アトリエでは、200Lの甕を藍甕として天然発酵灰汁建てで藍染しています。

  • すくも 28 kg
  • 灰汁 200L(りんごの木を燃やした灰と井戸水を使用)

すくもに灰汁を加え、手や足を使って柔らかくします。水分を含んだすくもは重く、かなりの重労働です。灰汁で甕を満たし、蓋をして温度管理しながら、夏場で一週間ほど発酵が始まるのを待ちます。

表面に金属膜が張ってきたら、発酵が始まっている証拠。小さな切れ端でテストしながら、発酵度合いを見ていきます。

染める

染めるものを濡らしてからこの藍甕に浸け、静かに動かしながら10〜30分置きます。引き出して空気に当て酸化させます。酸素と反応して青く変化してきます。

この行程を何日もかけ繰り返して濃い色に染めていきます。藍のバクテリアが疲れるので、一日に染められる量はわずかです。

黒に近いほど濃いものは、染料液に浸けては引き出し酸化させること20回以上、一ヶ月ほどかけて繰り返すことになります。

Soak garment in well water to eliminate the brown colour from lye.
染めた物を水につけてアク(茶色の色素)を抜きます。

■藍の種類

以下のうち、手に入る材料を使います。手に入る材料は、その年によって異なります。

いずれにしても、重労働の藍草栽培を経て、手作業で作られる藍の染料です。しっかり発酵させて、余すところなく使いたいと考えています。

-すくも/Composted indigo leaves from Tokushima

すくもは発酵したタデ藍の葉です。

すくもを作るには、収穫した藍の葉のみを取り分けて乾燥させ、一カ所に積み上げます。毎日切り返してまぜること100日。堆肥を作るように水分を調整しながら発酵させます。腐葉土のようになったら完成です。

すくもに含まれる藍の色素はとても少なく、原料となる藍葉は大変な量を必要とします。徳島では「藍師」とよばれる数少ない専門家がこの手間のかかる仕事をしています。

藍染めに使う 徳島のすくも。腐葉土のよいかおりがします。composted indigo leaves from Tokushima
徳島のすくも。腐葉土のよいかおりがします。

-琉球藍/Indigo extract from Okinawa

琉球藍は、沖縄で育てられる琉球藍の生葉を水に浸して発酵させ、色素のみを抽出したものです。その形状から「泥藍」とも呼ばれます。

色素を取り出すのに、大量の藍葉が必要です。例えば、20kgの泥藍をつくるのに、200kgの生葉が必要だそうです。

琉球藍 泥藍 沈殿藍 indigo extract okinawa
琉球藍。お酒で練って使います。

■ インディゴ染めと本藍染めについて

現在、市場にでている「インディゴ染め」の表記のある製品のほとんどは、化学染料である「インディゴピュアー」という人造藍をつかったものだそうです。「インディゴピュアー」(=純粋な藍)という名前がついていても、これは化学的に藍の成分を合成したもので、天然の藍ではありません。

これに対し本物の天然発酵建ての藍染め製品には、「本藍染め」または「正藍染め」などの名称がつけられています。(工業製品などには、苛性ソーダで染められたものや、インディゴピュアーなどが混用されていることもあると聞きます)。

藍甕の中の液体が黄色くなっている場合は、まずハイドロなどの薬品で建てられていると考えてよいそうです。

参考資料
「草木染め染料植物図鑑」山崎青樹著 美術出版社
「工程写真によるやさしい植物染料入門」 吉岡常雄著 紫紅社

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