先日、ここサイゴンにある南部女性博物館へ行ってきました。去年の晩秋に行った、ハノイにある女性博物館(アオイムを探して)の分館。女性にまつわるベトナムの歴史を展示しています。

まずはアオザイの歴史室から。

グエン朝(ベトナム中部・フエの王朝 1802~1945年)のアオザイは、中国服そのもの。シルク地に龍や花の刺繍がしてあり、ラストエンペラーにでてくる清朝の衣装のよう(下の写真・一番右の青地のもの)。

19世紀末のアオザイ(下の写真・一番左と中央)は、4部式と5部式。まるできもののようにゆったりとしたはおり式の服になっています。

1930年代、その頃の西洋化のトレンドに沿って、レ・フォーという芸術家がアオザイを再構築し、丈が短く細身の今のアオザイに近い形になったそうです。下のモノクロ写真は1930年代の女性の姿。

下の写真は、左が20世紀初頭の結婚衣装、右が1960年代の結婚衣装。袖がかなりスリムになっています。

この後も近年にかけて見頃もどんどんスリムに。衿の高さや衿のあるなしも洋服のように流行があったようです。パンツの幅も流行があるようです。

現在のサイゴン中央郵便局では、局員さんの着ているアオザイ制服でも、立ち衿のあるものとラウンドネックになっている形があります。どうしてかなと思っていましたが、ただのデザインの違いということですね。

一口にアオザイといっても、衿の形を変えたりフリルをつけたもの、カフス袖やラグラン袖にしたもの、打ち合わせの形を変えたもの、素材で変化をつけたものなど、さまざまなデザインがあることを知りました。

西洋の流行を取り入れてシルエットが変化していったことや、アオザイという限られたスタイルの中で個性を出そうとしていたことが、この流れからわかりました。それぞれの時代を代表する形はあっても、「これが正統派の絶対的なアオザイ」というものはないのだな、ということなのだと思います。

保存のため仕方ないのですが、室内は非常に暗く、ショーケースの位置も高くて細部がとても見づらい展示でした。脚立でもなければ、衿のあたりなんて見えません。そこが残念な展示でした。

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さて、次はさらに寂しい染めと手織り展示室へ。

染め材料が行李のようなカゴにざっくり入っていました。20年くらいこのまま放置されていそうな適当さ(このカゴも位置が高くて写真にすべておさまらず)。

下の丸いカゴに入っているのは、カシューナッツのオイル。黄色を染めるそうです。

下の黒い丸いものは、MAC NUA とあります。「マクルア」とタイで呼ばれるタイ黒檀と同じですね、きっと。

タンニンを利用して染めるため、発酵させたタイ黒檀を絞った液に布を浸け、日光に当てて染めます。柿渋染と同じ。それが下の再現シーン(説明が何もないので、これを見ても??と思う訪問者も多いのでは?)。

この衣と染織りフロアの他には、戦時中活躍した女性兵士や武器の展示、政治犯の写真、牢獄の様子や写真など、一人で見ているとだんだん気が滅入ってくる展示が盛りだくさんでした。ただ、こうやって大きな館のスペースを割いて、女性の活躍にスポットを当てているところは、さすがベトナム、社会主義の国ですね!

ハノイにある女性博物館の方が、展示物も多く見応えもあります。アオザイにとくに興味がある方以外は、ハノイの方をおすすめいたします!